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2011年05月27日(金)更新

社員の健康管理を真剣に考える時代に

居酒屋チェーン 日本海庄やで勤務していた店長の過労死事件の高裁判決が5月25日に出ました。
高裁も下級審判決を支持し、過労死に至るような長時間労働を従業員にさせたことについて
会社の責任のみならず、会社役員の責任も認める判断を示しました。

こちらの会社では、募集の際に提示していた給料の額は、80時間の残業をした場合に
支払われる金額で、<基本給(最低賃金)+80時間のみなし残業代>という形になっていたそうです。
80時間のみなし残業代とはいえ、80時間の残業をしないと減らされる仕組みでした。

法定労働時間を超えて、従業員に仕事をさせる場合、会社は時間外協定(36協定)を締結して
労働基準監督署に届出をしなければなりません。
時間外協定を締結する際には、一定期間の残業時間の「限度時間」が定められています。
1年単位の変形労働時間制を導入している場合は1か月42時間、1年であれば320時間。
それ以外は1か月45時間、1年であれば360時間が限度です。

しかし例えば決算処理などでどうしても特定の期間だけは
その限度時間内に残業時間が収まらない場合は、
「特別条項付」の時間外協定を締結することができます。
特別条項を結んだ場合、限度時間は会社で決めることができますが(時間の上限なし)
その期間は1年のうちの半分を超えないこと(すなわち6か月を超えないこと)とされています。

日本海庄やでは、時間協定の限度時間は月100時間としており
実際に時間外残業が100時間を超えるようなシフトの組み方で
長時間労働を抑制しようとする意思が全く見られなかったこと、
さらに健康診断の実施も行っておらず、従業員の命を守るという意識が
見られないということで、過労死事件で初めて、会社だけではなく
人事担当役員を含む役員個人にも損害賠償責任を負わせる判決となりました。

人の命はひとつしかありません。
従業員の命は必ず守るというのが、人を雇う経営者が最低限やらなければならないことです。

飲食店や運送業では長時間労働が常態化し、
「うちの業界はこんなものです。労働基準法を守っていたら会社がなくなってしまいます」
など言われる経営者も中にはいますが
長時間労働は、社員の命・健康に直結するという意識を持ち
真剣に会社として取り組みを考える時期に来ているのではないでしょうか。

さらに、中小企業でおざなりになっているのが健康診断です。
「受診させる時間がない、受診させる費用を会社が持たなければならないのであれば
負担増になるのでやりたくない」など、できな理由を述べる経営者も多くいますが
健康診断を実施して、社員の健康管理をすることも会社に課せられた義務なのです。
(労働安全衛生法に定めがあり)

何か起こってからさかのぼって健康診断を受診してもらうことはできません。
「知っていればこんな無理はさせなかったのに」と考えても後の祭りなのです。

■今回の日本海庄やの事件から学ぶべきことは以下です。

○みなし残業代を給料の中に取り込む場合は、上限は時間外協定の限度時間内に収めること
○会社として時間外労働の削減するための取り組みを行うこと
・法定労働時間を知った上で、自社の労働時間の実態調査を行う。
 どの部署でどんな業務で時間外労働が発生しているのかの分析を行う。
・時間外労働が社員の能力が劣ることで増えている場合は業務の負担を減らす、配置転換をするなどの
対策を行う
・時間外労働が過重な業務によるものの場合、業務分担の見直し、人員の投入、外注の活用などの対策を立てる
・休日出勤を減らすことで、労働時間の削減に効果あり
○社員の健康管理を徹底すること

なお、平成23年4月から各都道府県労働局の労働衛生課は健康課と名称を変更
労働局でも過労死・メンタルヘルスへの対策を強化するようになっています。

残業時間を減らすことで、結果的に残業代も減ります。
しかし残業時間を減らすためには基本的には人員の補充が必要になるので
社会保険料も含めた人件費は上がることになります。

しかし人員の配置や業務フローの見直し、外注の活用などは
経営者がやるという判断を示さなければ取り組みをすることができません。
「人の命は何にも変えられない」これを頭に入れて
長時間労働の削減に真剣に取り組みをされることをお薦めします。






2011年03月26日(土)更新

震災・計画停電における自宅待機等の取り扱いについて

このたびの東日本での震災、そして原発の問題、計画停電など
ご不自由を感じておられる方にお見舞い申し上げます。

震災直後から東京に支社を持つ会社の方から
社員を自宅待機させた場合の給料の取り扱いについて
ご質問をたくさんいただきました。

被災地の方だけではなく、今後計画停電も続いた場合
事業の運営と従業員の雇用の確保、給料の支払いなど
不安に感じておられる中小企業の経営者の方も
多くおられると思います。

地震発生から2週間。
休業に関する取り扱い等について
厚生労働省からの通達が出ていますので
まとめてお伝えしますね。

まず休業についての取り扱いです。

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【原則】労働基準法第26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、
休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を
支払わなければならない
------------------------------------------------------------------


リーマンショック以降、仕事が激減したことから
休業を余儀なくされていた会社もあるかと思います。
経済的な理由での休業は「使用者の責に帰すべき事由」として
取り扱われるので休業手当の支払い義務があります。
(上記労働基準法第26条)

それでは、今回の災害による休業が
「使用者の責に帰すべき事由」によるものなのかどうかですが
「天災地変等の不可抗力による場合」は「使用者の責に帰すべき事由」ではなく
第26条の適用はない、とされています。

計画停電についても、平成23年3月15日の厚生労働省の通達によると
「使用者の責に帰すべき事由」とは認められず
休業手当の支払いは必要がない、とされています。

シビアなようですが、労働契約とはそもそも労務の提供に対して
賃金を支払うというものです。
ノーワークノーペイが原則なのです。

では東北に工場があり、部品調達ができないので仕事ができず
会社を休まざるを得ない場合はどうでしょう。

通常、原料・資材等の不足による休業は「使用者の責めに帰すべき事由」と
して扱われ、労基法第26条の休業手当の支払い義務が発生します。

しかし今回については、その原因が不可抗力であると判断される場合は
休業手当の支払い義務は発生しません。

●不可抗力として判断される要因とは
1.その原因が事業の外部により発生した事故であること
2.事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くして
なお避けることができない事故であること


このあたりの取り扱いについては、3月18日付で労働基準法の取り扱いに関するQ&A
厚生労働省は出しています。

こんなときだからこそ社員の生活を守らなければならない、という
経営者の気持ちから、自宅待機であっても全額補償をしている企業も
多いようですが、計画停電もこれからも続くことを考えると
会社も生き残りをかけてシビアに判断をしなければならない
局面もでてくるかもしれません。

企業だけに負担を負わせるのではなく
国もセーフティネットを準備しています。

■従業員が使える制度
1)休業を余儀なくされている従業員に失業給付を支給
震災が原因で会社が休業し、
休業手当も受給できない労働者を保護するために
雇用保険の失業給付の特例措置
準備されています。
こちらは失業していなくても失業手当を受給できるという内容です。

2)退職を余儀なくされ未払い賃金がある場合は、立替払いの請求ができる
さらに退職を余儀なくされ、賃金も未払いの場合は
賃金の支払の確保等に関する法律により
未払い賃金の立替払いを請求することができます。
(窓口は事業所を管轄する労働基準監督署)
こちらについても被災地域についての
取り扱い通達が3月23日に厚生労働省から出ています。


■会社が使える制度

会社が休業手当を従業員に支払う場合については
雇用調整助成金の利用ができる場合もあります。
(売上げが前年対比5%減などの要件あり)

震災の被害が大きかった青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち
災害救助法適用地域に所在する事業所の場合は特例措置も設けられています。

最後に事業の継続が困難になった場合、従業員を解雇せざるを得ない
ということもあるかと思います。
通常、従業員を解雇する場合には、30日以上前の予告、もしくは
平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いが労働基準法第20条で
義務付けられています。
但し「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が
不可能となった場合」は解雇予告の除外事由とされています。
事業所を管轄する労働基準監督署の認定を受けることが必要です。

この場合、「天災事変その他やむを得ない事由」があるだけでは
事足りず、そのために「事業の継続が不可能」となることが必要です。
「事業の継続が不可能」であったとしても、原因が「天災その他
やむを得ない事由」でない限りは解雇予告除外の認定を取ることはできませんのでご注意ください。

*今回のブログにつきましては厚生労働省HP及び
『労働基準法コンメンタール』(厚生労働省労働基準局編)を
参考に書きました。

2011年03月09日(水)更新

『新入社員ヒロと謎の育成メールの12カ月』

営業マンのための本を何冊も執筆されている
渡瀬 謙さんが新刊を出されました。

新入社員ヒロと謎の育成メールの12ヵ月
新入社員ヒロと謎の育成メールの12ヵ月
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今度の本は小説仕立で、新人営業マンが様々な問題を乗り切りながら
一人前の営業マンに育っていくという内容です。

読み物としても十分に楽しめる内容なんですが
さすがに営業マン研修を家業とされているだけあって
営業マンが直面する様々な問題に対して
どのように気持ちを切り替えて対処していくか
お客様や上司、同僚との仕事の進め方など
学べる内容が盛りだくさんです。

実は、私、最近、会社の夢をよく見ます。
大学を卒業して11年間勤務していた会社です。
昔の自分に戻った夢を見るのではなく
今の自分が会社に戻ってそこに席があるんだけど
ブランクがあるのでもうこの仕事は無理!って思う夢(笑)

自分で仕事をする(自営業)というのはすべての面で自分で決断をして
自分が動かなければ何も動きません。
自由で人間関係のストレスがない反面、
自分しかいないので、くじけられないんです。
弱ったときは「周りの誰かが励ましてくれたらいいのになぁ」って
思うことが多々あります。
(今、多分、弱ってるんだと思います)

会社にいるときは、色々大変だったけど
上司や同僚に励まされて、仕事をすることができました。
私の社会人としての原点は会社にあり、同じ会社で11年間勤務が
できて本当によかったと思っています。

今は、どこの会社も余裕がなくなりギスギスしていたりしていると思いますが
組織で力を合わせてひとつの仕事をする、という原点は変わっていないはず。
この本を読んで会社員時代を懐かしく思い出しました。

会社に、なかなかなじめない新人さんがいたら
ぜひ読ませてあげてくださいね。

余談ですが、著者の渡瀬謙さんとは知り合って5年になります。
私が初めて東京に出てきたときにあるイベントでご一緒になり
知らない人に囲まれて不安そうにしていた私と話をしてくださいました。

それ以来のお付き合いで、本を出すごとに献本をしてくださいます。
営業マン研修の講師というと、押しが強い人を思い浮かべられるかもしれませんが
すごく無口で静かな方です。
でもきっと他の方とも静かにお付き合いを続けておられるのでしょう。
それが本を何冊も出したり、本業の方でも成功されている秘訣だと思います。
私が尊敬している人の一人です。

今日、ご紹介した新刊も、表紙の感じからは「キワモノ」のイメージがあるかもしれませんが(笑)
渡瀬さんの温かさが伝わってくる本です。
ぜひご一読くださいね!

2011年03月08日(火)更新

できていることにフォーカスする

新しい事務員さんが来てもうすぐ2か月になります。
全くの未経験者ですが、前向きで素直な性格ゆえに
どんどん仕事を覚えてやってくれています。

20代ってすごいです。
頼んだ仕事に対して
まずNO!を言わない。
(彼女の性格なのかもしれませんが)

でもNO!を言わないのは、実は何も見えていないので
危険度がわからないからなんですよね。
経験値を積むと、ここはヤバイとか、感じるところがあるのですが
経験がないと、道があるところもないところも
砂利道であろうと、草むらであろうと
どんどん突き進んでいくのは心強くもあり、
しかし仕事でやるからは無謀としか言いようがないときもあります。

そんなときは「考えてから行動して!」と雷が落ちることになります。

しかし!雷を落としながらいつも自分を反省しています。
できていないことを責めるのは簡単だけれども
彼女ができることをほめてあげてない自分がいるからです。

彼女ができるようになったことは
自分にとっては当たり前のことなので、
本当はすごく成長をしているのに
意識をしないと、そののびしろに目がいかないんですよね。

例えばゼロから80までできるようになったとしても
自分基準では100が当然なので
足りない20に対して怒ってしまうというか・・・

自分自身も仕事をしていて、やっている部分を認めてもらえなくて
悔しい思いをすることが多くあります。
そもそもゴールに対してのすり合わせがうまくいってないときに
起こりがちなことだと思うのですが。

同じ目的に向かって進んでいるはずなのに
相手が何をやっているのか見えていなくて
自分が相当の努力をしてやっていることも相手には伝わっていない。
これってつらいですよね。

私のように大人になると、そもそも80のがんばりはほめてもらえず
100、もしくはそれ以上やって当然(しかも仕事であれば尚のこと)
ということもあるでしょうが。

人は自分のことはよく見えるけれども
相手のことは見えているようで見えていないことが多いと思います。
コミュニケーションを積極的にとって、気づいたときに
小さなことでもほめる、感謝の気持ちを伝えるを実行していきたいと思います。

他人のがんばりを認めてあげられなければ
自分も認めて欲しい人に認めてもらえないと思うので。

ホンマに日々学びやなぁ・・・

2011年01月11日(火)更新

スタッフの加入で未来が見えた!

今日から待望のニューフェイスデビューです!
新しい職員さんはまだ20代。美人!!
但し新婚旅行帰り(笑)

笑顔でお迎え・・といきたかったのですが
週末休みなしで仕事をしていた続きで
朝から鬼の形相で仕事をしておりました。

13時半を回った頃にひと段落。
なんか今日はすごく集中できました。

一人だと、郵便やら色々細かいこともすべて
自分でやらなければいけなくて、
いくつも抱えることで前に進まなくなってしまうんですよね。

今日、半日でできたことは、年末からずっと気になっていたことで
もっと時間がかかるって思っていました。
でも、スタッフが来てくれた安心感で集中できたんですよね。

自分の前に開けている道は、一人でもスタッフがいても
同じだと思うのですが、スタッフがいてくれると
雑念にとらわれずにいかにして前に進むかに集中できるのがいいですね。

自分で仕事をやっている人間は、目の前のことだけではなく
将来を見据えて、今何をやるべきかを逆算して考えるので
将来が見えないと、過去に受けた仕事の処理しかできなくなるんですよね。
それだと未来は開けません。

1か月前の今頃は年末調整もあり、監督署や年金事務所の調査もあり
助成金の申請もありで、どないなるかって押しつぶされそうでした。
小学校の講堂にある大きな緞帳が目の前に引かれていて
前も見えないし、動けない感じがしていましたが
今は目の前が明るく開けています。

単行本の執筆もありますし、2月から4月にかけて講演もありますので
まだまだやるべきことはたくさんありますが、
ひとつずつがんばっていきます!

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