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2011年03月26日(土)更新

震災・計画停電における自宅待機等の取り扱いについて

このたびの東日本での震災、そして原発の問題、計画停電など
ご不自由を感じておられる方にお見舞い申し上げます。

震災直後から東京に支社を持つ会社の方から
社員を自宅待機させた場合の給料の取り扱いについて
ご質問をたくさんいただきました。

被災地の方だけではなく、今後計画停電も続いた場合
事業の運営と従業員の雇用の確保、給料の支払いなど
不安に感じておられる中小企業の経営者の方も
多くおられると思います。

地震発生から2週間。
休業に関する取り扱い等について
厚生労働省からの通達が出ていますので
まとめてお伝えしますね。

まず休業についての取り扱いです。

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【原則】労働基準法第26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、
休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を
支払わなければならない
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リーマンショック以降、仕事が激減したことから
休業を余儀なくされていた会社もあるかと思います。
経済的な理由での休業は「使用者の責に帰すべき事由」として
取り扱われるので休業手当の支払い義務があります。
(上記労働基準法第26条)

それでは、今回の災害による休業が
「使用者の責に帰すべき事由」によるものなのかどうかですが
「天災地変等の不可抗力による場合」は「使用者の責に帰すべき事由」ではなく
第26条の適用はない、とされています。

計画停電についても、平成23年3月15日の厚生労働省の通達によると
「使用者の責に帰すべき事由」とは認められず
休業手当の支払いは必要がない、とされています。

シビアなようですが、労働契約とはそもそも労務の提供に対して
賃金を支払うというものです。
ノーワークノーペイが原則なのです。

では東北に工場があり、部品調達ができないので仕事ができず
会社を休まざるを得ない場合はどうでしょう。

通常、原料・資材等の不足による休業は「使用者の責めに帰すべき事由」と
して扱われ、労基法第26条の休業手当の支払い義務が発生します。

しかし今回については、その原因が不可抗力であると判断される場合は
休業手当の支払い義務は発生しません。

●不可抗力として判断される要因とは
1.その原因が事業の外部により発生した事故であること
2.事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くして
なお避けることができない事故であること


このあたりの取り扱いについては、3月18日付で労働基準法の取り扱いに関するQ&A
厚生労働省は出しています。

こんなときだからこそ社員の生活を守らなければならない、という
経営者の気持ちから、自宅待機であっても全額補償をしている企業も
多いようですが、計画停電もこれからも続くことを考えると
会社も生き残りをかけてシビアに判断をしなければならない
局面もでてくるかもしれません。

企業だけに負担を負わせるのではなく
国もセーフティネットを準備しています。

■従業員が使える制度
1)休業を余儀なくされている従業員に失業給付を支給
震災が原因で会社が休業し、
休業手当も受給できない労働者を保護するために
雇用保険の失業給付の特例措置
準備されています。
こちらは失業していなくても失業手当を受給できるという内容です。

2)退職を余儀なくされ未払い賃金がある場合は、立替払いの請求ができる
さらに退職を余儀なくされ、賃金も未払いの場合は
賃金の支払の確保等に関する法律により
未払い賃金の立替払いを請求することができます。
(窓口は事業所を管轄する労働基準監督署)
こちらについても被災地域についての
取り扱い通達が3月23日に厚生労働省から出ています。


■会社が使える制度

会社が休業手当を従業員に支払う場合については
雇用調整助成金の利用ができる場合もあります。
(売上げが前年対比5%減などの要件あり)

震災の被害が大きかった青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち
災害救助法適用地域に所在する事業所の場合は特例措置も設けられています。

最後に事業の継続が困難になった場合、従業員を解雇せざるを得ない
ということもあるかと思います。
通常、従業員を解雇する場合には、30日以上前の予告、もしくは
平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いが労働基準法第20条で
義務付けられています。
但し「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が
不可能となった場合」は解雇予告の除外事由とされています。
事業所を管轄する労働基準監督署の認定を受けることが必要です。

この場合、「天災事変その他やむを得ない事由」があるだけでは
事足りず、そのために「事業の継続が不可能」となることが必要です。
「事業の継続が不可能」であったとしても、原因が「天災その他
やむを得ない事由」でない限りは解雇予告除外の認定を取ることはできませんのでご注意ください。

*今回のブログにつきましては厚生労働省HP及び
『労働基準法コンメンタール』(厚生労働省労働基準局編)を
参考に書きました。

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